2017年(平成29・30・31年)学習指導要領改訂のポイントを徹底解説!

ラーニング

2017年(平成29・30・31年)に改訂された学習指導要領は、これからの時代を生きる子どもたちに求められる資質・能力を育むことを目的として、大きな転換を迎えました。
新学習指導要領は、小学校で2020年度から、中学校で2021年度から、高等学校で2022年度から全面実施されています。

今回の改訂は、知識の詰め込み型学習から脱却し、子どもたちが自ら問いを立て、多様な人々と協力しながら、より良い社会を創り出していく力を育むことを目指しています。

このブログ記事では、学習指導要領改訂の主要なポイントを分かりやすく要約してご紹介します。

改訂のキーワードは「社会に開かれた教育課程」

今回の改訂の根底にあるキーワードは、「社会に開かれた教育課程」です。
これは、学校が社会や世界と連携しながら、社会の変化や課題を教育に取り入れ、子どもたちが社会の中で主体的に学び、未来を切り拓く力を育むことを意味します。

具体的には、学校で学ぶことが社会の現実とどうつながっているのかを意識させることで、子どもたちの学習意欲を高め、学びを実社会で活かす力を養います。


3つの柱で育む「生きる力」

新学習指導要領では、子どもたちが未来を生きるために必要な力を、以下の「3つの柱」で整理しています。

  1. 知識・技能
    これまでの学習指導要領と同様に、各教科で学ぶべき「知識」と「技能」を明確化しています。
    しかし、単に暗記するだけでなく、それを「使える知識・技能」として定着させることを重視しています。
  2. 思考力・判断力・表現力等
    得た知識や技能を、実社会の様々な場面で活用する力です。具体的には、物事を論理的に考え、多角的に判断し、自分の考えを分かりやすく表現する力を指します。
    アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)を通して、この力を育むことが求められています。
  3. 学びに向かう力・人間性等
    自ら進んで学ぼうとする力や、多様な人々と協力して課題を解決しようとする力、そして自分自身や他者を尊重する心など、人間性に関わる部分です。
    これは、学習の基盤となる部分であり、教科横断的な学習を通して育まれます。

これら3つの柱をバランスよく育むことで、変化の激しい社会を生き抜くための「生きる力」を養います。


授業の質を高める2つの重要な取り組み

今回の改訂では、上記3つの柱を育むために、教員に求められる役割が大きく変わりました。特に重要なのが、以下の2点です。

1. カリキュラム・マネジメントの推進

カリキュラム・マネジメントとは、学校が教育目標を達成するために、教育課程(カリキュラム)を組織的かつ計画的に編成・実施・評価し、改善していくことです。

  • なぜ重要?
    • 教科横断的な学び: 各教科の学びがバラバラにならないよう、学校全体でつながりを持たせます。例えば、理科で学んだ知識を家庭科や図工で応用するなど、教科間の連携を強化します。
    • 地域との連携: 地域の人材や資源、社会の課題を積極的に授業に取り入れ、学びをより現実的なものにします。
    • 学校の特色作り: 各学校の強みや地域性を活かした独自のカリキュラムを構築し、子どもたちの学びをより豊かにします。

教員一人ひとりが自分の授業だけでなく、学校全体のカリキュラムを意識し、連携して教育活動を行うことが求められています。

2. 「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)の実現

これは、今回の改訂における授業改善の最大のポイントです。

  • 主体的: 受け身ではなく、子どもたちが自らの学びに関心を持ち、見通しを持って粘り強く学ぶこと。
  • 対話的: 他者との協働や対話を通して、自分の考えを広げたり深めたりすること。
  • 深い学び: 知識をバラバラに覚えるだけでなく、既存の知識と結びつけたり、新たな意味を見出したりしながら、思考を深めていくこと。

従来の「教員が一方的に教え、生徒が聞く」というスタイルから、グループワーク、ディスカッション、発表、探究活動などを通して、子どもたちが自ら課題を発見し、解決していく授業へと転換を図ります。


各教科の主な変更点

小学校

  • 外国語(英語)教育の強化: 3・4年生で「外国語活動」が必修化され、5・6年生では「外国語科」として教科化されました。これにより、音声によるコミュニケーションを中心に、英語に慣れ親しむ機会が増えました。
  • プログラミング教育の必修化: 2020年度から、小学校の各教科でプログラミング的思考を育む学習が必修化されました。論理的に考える力や問題解決能力を養うことを目的としています。
  • 体育の授業時数増加: 運動に親しむ機会を増やすため、授業時数が増えました。

中学校

  • 外国語教育の高度化: 小学校での学習を土台に、中学校では「聞く・話す・読む・書く」の4技能をより一層高めることを目指します。授業は原則として英語で行うこととされました。
  • 武道・ダンスの必修化: 体育で武道またはダンスが必修となりました。
  • 情報分野の充実: 情報の活用能力を育むため、内容が拡充されました。

高等学校

  • 新科目「公共」の設置: 「現代社会」に代わり、社会の課題を自らのこととして考え、解決策を探る力を育む「公共」が新設されました。
  • 「総合的な探究の時間」の導入: 探究的な学習をさらに深めるため、「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に改められました。
  • 「情報Ⅰ」の必修化: すべての高校生が「情報Ⅰ」を学ぶことが必修となり、プログラミングやデータサイエンスの基礎を学びます。

まとめ:未来を生きる力を育むための教育改革

今回の学習指導要領改訂は、単なる教科内容の変更にとどまらず、学習のあり方そのものを大きく変えるものです。

教員は、知識を一方的に教えるだけでなく、子どもたちが「主体的・対話的で深い学び」を実現できるよう、授業をデザインすることが求められます。
子どもたちは、与えられた問いに答えるだけでなく、自ら課題を見つけ、仲間と協働しながら解決策を探すことで、未来を創る力を身につけていきます。

この改訂によって、日本の教育は新しい時代に向けて大きな一歩を踏み出しました。
今後も、学校、家庭、そして社会全体で連携し、子どもたちの可能性を最大限に引き出す教育を目指していくことが重要です。


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