サッカーの試合中、審判がレッドカードを提示する瞬間は、観ている私たちにも緊張が走ります。
イエローカードが「警告」
レッドカードは「退場」
選手はその場でピッチを去らなければなりません。
さらに、チームは残りの時間を1人少ない状態で戦うことになり、その後の試合への出場停止処分も科されるため、非常に重い意味を持ちます。
では、具体的にどのようなプレーがレッドカードの対象となるのでしょうか?
今回は、サッカー競技規則に定められているレッドカード(退場)の対象となる反則の種類について、詳しく解説していきます。
レッドカードの対象となる7種類の反則行為
サッカー競技規則第12条「ファウルと不正行為」において、レッドカード(退場)の対象となる行為は以下の7種類が明確に定められています。
- 著しく不正なプレー(SFP:Serious Foul Play)
- 乱暴な行為(VC:Violent Conduct)
- 人をかむ、またはつばを吐く
- 攻撃的・侮辱的な、もしくは下品な言動
- 決定的な得点機会の阻止(DOGSO:Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity)
- VORに入る
- 2度目の警告(イエローカードの累積)
これらは大まかな分類であり、実際にはより具体的な状況が想定されていますが、特に重要なのは上位3つと「決定的な得点機会の阻止」の概念です。
各退場対象行為の詳細解説
1. 著しく不正なプレー(Serious Foul Play)
これは、ボールにプレーしようとした際に、過剰な力や相手の安全を脅かす危険な方法で相手に挑むプレーを指します。意図的に相手を傷つけようとする悪質なファウルが含まれます。
- 例:
- 両足でのスライディングタックルで、足裏が相手に向かっている場合。
- ボールとは関係なく、相手の足首や膝などを狙って踏みつけるような行為。
- スパイクの裏を見せてのタックルで、相手に重傷を負わせる可能性のある行為。
- ボールが離れているにもかかわらず、相手選手に対して不必要な、または危険な方法でチャージする。
これは、選手の安全を最優先するために厳しく取り締まられる行為です。
2. 乱暴な行為(Violent Conduct)
ボールがインプレーであるか否かにかかわらず、競技者、チーム役員、交代要員、交代して退いた競技者、または審判員に対し、過剰な力や粗暴な行為を用いて身体的に攻撃する、または攻撃しようとする行為を指します。ボールとは全く関係なく行われる、暴力的な行為です。
- 例:
- 頭突き、パンチ、キック、肘打ちなど、直接的な暴力行為。
- 相手選手が倒れているにもかかわらず、意図的に踏みつけたり蹴ったりする。
- プレー外で、相手選手と口論になり、突き飛ばしたり殴りかかったりする。
- 審判やコーチ、観客に対して暴力的な行為をする。
乱暴な行為は、試合の品位を著しく損なうため、非常に重い罰則が科されます。
3. 決定的な得点機会の阻止(DOGSO:Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity)
これは、相手が明確な得点機会を得る状況において、反則によってその機会を阻止する行為です。
ペナルティーエリア内外、ハンド、そしてゴールキーパーによる阻止など、様々な状況が想定されます。
- DOGSOが適用されるための判断基準:
- 守備側競技者の数と位置: 阻止しようとした守備側の選手以外に、ボールとゴールの間にどれくらいの守備側選手がいるか。
- 攻撃の方向: ゴールに直結する方向へボールが運ばれているか。
- ボールをコントロールできる可能性: 攻撃側選手がボールをコントロールできる状況であったか、またはその可能性が高かったか。
- ボールまでの距離とゴールの距離: ボールがゴールにどれくらい近いか、攻撃側選手がボールに到達するまでの距離。
具体的な例:
- ハンドによる阻止:
- ゴールライン付近で、フィールドプレイヤーが手を使って明確なゴールを阻止した場合(意図的であると判断されればレッドカード)。
- ペナルティーエリア外で、手を使って相手の決定的な得点機会を阻止した場合。
- ファウルによる阻止(ペナルティーエリア外):
- 相手選手がゴールに向かって完全にフリーな状態で、後ろから不必要なファウルで倒した場合。
- ドリブルでゴールに向かっている相手選手を、ファウルで止めた場合。
- ファウルによる阻止(ペナルティーエリア内):「三重罰」の緩和
- 以前はペナルティーエリア内でのDOGSOの場合、PK、退場、出場停止の「三重罰」が課されていました。
しかし、現在はファウルがボールへのプレーの試みであった場合(相手を傷つける意図がない、または過剰な力ではない場合)、PKとイエローカード(警告)に緩和されることがあります。
ただし、ボールへのプレーの試みがなく、相手を故意に倒したり、明らかにボールと関係なく阻止した場合は、これまで通りレッドカード(退場)が適用されます。 - ゴールキーパーの場合も同様の考え方が適用されます。
- 以前はペナルティーエリア内でのDOGSOの場合、PK、退場、出場停止の「三重罰」が課されていました。
4. 著しく侮辱的な、攻撃的な、または下品な言葉またはジェスチャーを使用する
審判員、相手競技者、チーム役員、観客などに対し、非常に侮辱的、攻撃的、または下品な言葉遣いや身振りをした場合、一発でレッドカードが提示されます。
- 例:
- 差別的な発言やジェスチャー。
- 著しく攻撃的、または挑発的な言葉。
- 品位を損なうような下品なジェスチャー。
5. 2度目の警告(イエローカードの累積)
これは、直接レッドカードが提示される反則ではありませんが、1試合中にイエローカードを2枚受けると、自動的にレッドカードが提示され、退場となります。
- これは、軽微な反則であっても繰り返すことに対する罰則であり、スポーツマンシップを損なう行為の抑制を目的としています。
まとめ
レッドカードは、試合の秩序と選手の安全を保つために非常に重要な役割を果たします。プレーの状況や意図によって判断は異なりますが、特に「著しく不正なプレー」や「乱暴な行為」は、選手の安全を脅かすため厳しく罰せられます。また、「決定的な得点機会の阻止」は、サッカーの醍醐味であるゴールを奪う機会を不当に奪う行為として重く見られます。
これらの反則行為を理解することで、より深くサッカーの試合を観戦し、審判の判定の意図を理解できるようになるでしょう。
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